コンテンツツーリズムと神社

神社の公式BLOGに「妖怪」が出現してしまって申し訳ありません。

お盆月は、神社にお参りになる方もあまりおられませんので、宮司はお休みをいただいて鳥取県境港市まで行ってまいりました
(前のBLOG投稿にあったように、巫女さんのタイ行きがうらやましくて、どこかで息抜きしたくなったのありましょうか)。

目的地は、近年盛大な賑わいをみせている観光地「水木しげるロード」です。

私が初めて当地を訪れたのは約30年前。
当時はまだまだ昭和風情が残ったくたびれたアーケードとシャッター商店街に、ちらほらと妖怪の銅像が置かれ始めた頃でした。
TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』に幼少から親しんで育った世代ですし、決して嫌いな作品ではなかったのですが「妖怪の銅像を置いたところで観光客など集まらないだろう」と斜に構えた視線でみていたのを思い出します。

 

2回目に訪れたのが約10年ほど前。
その頃には、設置された妖怪の銅像も120体を超え、妖怪神社や水木しげる記念館なども開館。
NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』放送直後であったのも多大な効果があったのか、明らかに垢ぬけた人気観光地へと変貌していました。

 

そして、三たび訪れた現在。年間350万人を超える観光客が訪れる山陰屈指の一大観光地に!
(出雲大社の年間参拝者数が200万人台で推移していることと比較するとバケモノのような数字です)。
30年前の自分の見立てが甘かったことを痛感させられます。

いまや200体近くとなった小さな妖怪銅像の設置は、スマートフォン付属の高性能カメラの登場と
その場で誰もが情報発信できるSNSの普及、その双方と非常に相性が良かったのでしょう。
加えて「妖怪」という通俗的で誰もが親しみやすいコンテンツであったことも大きかったのだと思います。

観光学の分野では、アニメやマンガ、映画、キャラクターなどサブカルチャーに関わるコンテンツをきっかけとした旅行行動と、これらを活用した観光振興を「コンテンツツーリズム」と呼んでいます。
水木しげるロードは、そのコンテンツツーリズムの大成功例として、国内でも群を抜いているのではないでしょうか。
(当地龍野でも映画「寅さん」が有るといえば有るのですが、若い世代への訴求力という面では課題が残ります)。

 

さて、そんな多大な賑わいをみせる水木しげるロードの北側、連日満員の水木しげる記念館のすぐ裏手に、観光客が誰ひとり足を踏み入れない神社がありました。
社名は「大港神社」といいます。古くから山陰有数の港町である境港を支えた、豊漁・海上安全の神様のようです。
境水道に面した北向きのご社殿ですので、繁盛する水木しげるロードに完全に背を向けて建っています。

徒歩3分の位置に、年間350万人も観光客が来訪するのであれば、便乗して「妖怪御守」や「妖怪絵馬」を神社境内で授与していそうなものですが、そういった類は一切なさそうでした。
「観光は観光」、地元に根ざした「祈りは祈り」と、ストイックに分けて考えておられる姿勢に、同じく神社を護持運営していく身として、背筋を正す心持ちがいたしました。

個人的には多くの方々に神社に足を運んでもらい、神道に興味をもってもらうために、コンテンツツーリズムは良い施策だとは思います。
我が国のサブカルチャーは、今や世界に誇る一大コンテンツとなっていますので、神社の尊厳を貶めない範囲でバランス良く付き合っていく必要があるのでしょうね。

 

【オマケ】今回の旅で最後に立ち寄った岡山県のとある神社にあったPOP↓

(本投稿は、Instagramに投稿した記事をBLOG向けに改稿したものです)

おすすめの記事